星の見える東京

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野田洋次郎『ラリルレ論』

野田洋次郎『ラリルレ論』

らりるれろん野田洋次郎『ラリルレ論』

RADWIMPSのボーカル野田洋次郎さんの日記とエッセイを収録した『ラリルレ論』。

RADWIMPSを最初に知ったのは、大学生の頃、当時のバイト仲間と一緒に行った近所のカラオケで、そのうちの一人が歌った、ある初期のRADの曲だった。流れてくる歌詞に惹かれ、以来、RADWIMPSと野田洋次郎の虜になった。

その野田さんの日記とあれば、是が非でも読んでみたいと、僕はさっそく駅前の本屋に駆け込んだ。

しかし、本屋で『ラリルレ論』をぱらぱらと立ち読みしたときの第一印象は、正直、「あれ?」という若干の違和感だった。

日記という形式の影響もあるのかもしれないが、文章がふわふわしたり、感情的に「泣いた」と書かれているだけの日もあり、本の厚みも考えると、この調子で続くようなら、読み進めるのはちょっとしんどいかな、というのが、率直な感想だった。

でも、購入し、帰宅後、腰を据えて一から読み進めていくと、読後はまったく違った印象を持った。

繰り返される「泣いた」には、深い前段階のストーリーがあり、その涙は、胸に渦巻く、どうしようもできない感情が徐々に高まっていって溢れだしたものだということが、痛いくらいに伝わってきた。

そこには、天才で、類い稀な能力を自在に駆使しているミュージシャン、といった余裕は微塵もなく、ぐしゃぐしゃになりそうな、今にも壊れそうな、でも、なんとか歌で世界や他者や過去と繋がっている、そういう今を生きる一人の若者がいた。

決して格好いい日記ではなかった。でも、まさにこの日記の向こうに、必死に生きる一人の同世代の若者がいるのだということが、痛切に感じられる内容だった。

頑張れ、とエールを送られるようなものではなく、むしろ、「一緒に頑張ろう」と自然に思えるような、この時代を、この世界を、生きてやろう、と思わせてくれるような本だった。

政治について語ることも、家族について語ることもあった。お気に入りの映画や定食屋について語ることも、恋愛について語ることもあった。

赤裸々な、表紙からあとがきまで、丸ごと野田洋次郎という一冊で、ページをめくりながら、30歳になる一人の青年であり、日本を代表するミュージシャンの「肉声」を聴いているようだった。

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