呼吸

ときおり、その空間に立っていられないときがある。その空間にいると押しつぶされて消えるか、弱さが溢れ出そうになる。そうして必死に自分を位置付けようと深呼吸をする。この世界に立っていられるように深く息を吐く。でも、その吐く息に対する罪の意識が、吐息を歌にしようとする。下手くそな歌。だから、鳥のさえずりやミュージシャンの歌声に嫉妬する。

ああ、あんな風に美しい歌が歌えたら、ここに存在をゆるされながら呼吸ができるのに。

そばに寄り添っていたいと思いながら、そばにいることをゆるされない。寄り添っていてほしいと願いながら、遠ざかってゆく。