母とデジカメ
還暦を迎えたばかりの母が、最近デジカメを購入した。
これまで父がカメラを持っていることはあったものの、iPhoneや写ルンです以外で、初めて母は自分専用のカメラを手にした。
操作性が簡単で使いやすく、夜景がきれいに撮れるもの、という条件で、近所のカメラ屋さんのスタッフと相談しながら機種を考えたようだ。
そして、購入したデジカメはソニー製のコンデジ。
使いやすいし画質もいいと喜んで、庭に咲く花の写真や日々の風景を撮影しては僕にも送ってくる。
また、カメラを手にしてから、母は日常生活を送りながら、「ああ、この一瞬を切り取りたい」と思うことも増えたと言う。
自分のなかに、「この一瞬を切り取りたい」という感性があることを見つけた、と喜んでいた。
先日、電話で母の撮影した花の写真の感想を伝えた際に、少しだけ花の話もした。
僕はそれほど花の名前に詳しくはないのだけれど、母は色々と知っていて、「よく知ってるね」と驚いたら、「おじいちゃんが植物に詳しかったからね」と言った。
祖父は、僕が小学生の頃に亡くなった。植物に詳しいというイメージがあまりなかったので、祖父と植物の繋がりに、僕はなんだか新鮮な気持ちがした。
そうだったんだね、と僕は言った。
実家の庭には、祖父が大事にしていたという花も咲いている。
母は、カメラを通して庭に咲く花を覗きながら、きっと祖父との思い出も眺めていたのだろう。