月別アーカイブ: 2018年6月

梅雨の映画

美しい夕焼けだな、と思った翌日、朝からしとしとと雨が降り、東京も含め梅雨入りの発表が出された。梅雨になると聴きたくなる歌は、くるりの『ばらの花』。くるりの曲は、悲しくてちょっとだけ楽しい雨の匂いがする。

もう一つ、梅雨になると思い出すものに、『いま、会いにゆきます』という映画がある。たくみみおという若い夫婦と、幼い息子の佑司ゆうじの家族の物語だ。巧は田舎町の司法書士事務所で働いている。もともと病気を抱え、乗り物や人ごみで体調が悪化する。澪は、佑司の難産もあり、出産以来体調を崩し、出産から五年後の二十八歳という若さで亡くなる。自身の体の弱さのせいで彼女のことを幸せにできなかったと巧は後悔し、佑司も母親が死んだのは自分のせいではないか、と考える。澪が遺した絵本には、死んだひとは「アーカイブ星」に行き、雨の季節になると帰ってくるとあった。そして、澪の死から一年、梅雨の季節が訪れる。

巧と佑司は澪が帰ってきてくれると信じ、その願いは真実となる。こうして梅雨のあいだだけの三人の暮らしが始まる。

大学時代、この映画をDVDで初めて見たときには涙が止まらなかった。巧の後悔や罪悪感が痛いくらいに伝わってきた。梅雨のあいだの、澪とのわずかな幸福の日々が、彼らにとっての赦しだったんだろうなと思う。

多摩川とギターの音色

多摩川の河川敷では、楽器の練習をしている人がときどきいる。トランペットの音が聴こえてくるときもあれば、ギターの練習をしている若者を見かけることもある。河川敷に座って、ギターの練習をし、ときおり歌も織り交ぜて弾き語りをしている。狛江駅前で路上ライブをしているミュージシャンもいるが、彼らよりも、もう少し若いことが多いような気もする。

あるとき、下北風の古着ファッションでギターケースを抱えて訪れ、缶ビールを横に置いて弾き語りする若い男女のカップルがいた。それほど声は張らずに、隣に座っている彼女に届かせるような優しい声で歌っていた。その空間だけ、物語の世界みたいだった。

映画のロケ地になり、実際に物語の世界としても使われているが、現実のほうが物語のように映る瞬間もある。漫画『ソラニン』は、バンドマンの物語で、舞台がこの街ということもあり多摩川もよく登場する。ソラニンの影響から多摩川でギターの練習をする若者が増えたのか、それとも、もともと多摩川で練習をする人が多いことから、その光景に浅野いにおさんがインスピレーションを得たのか。もしかしたら、浅野いにおさん自身が、その一人だったのかもしれない、などと想像したりもする。

紫陽花と六月

今日から六月。六月と言えば紫陽花。紫陽花を見ると、実家の庭を思い出す。庭には、僕が小学生の頃に亡くなった祖父が大事にしていた松の木があり、その横に紫陽花が咲いていた。最近は不安定な天気が続く。ただ梅雨入りはまだ先のようだ。