野菜の無人販売所
狛江を歩いていると、東京都内で、23区外とは言え世田谷区のすぐ隣なのに、結構多くの畑が目にとまる。
畑は、決して広大というわけではないものの、住宅地の合間にひっそり点々と農地があり、こうした景観や町並に、どこか帰ってきたような懐かしい安堵感を抱く。
また、畑には、ときおり「直売所」が隣接され、驚くことに「無人販売所」の場合さえある。
以前、外国人が日本を訪れてびっくりすることの一つが、この「無人販売所」の存在だという話を聞いたことがあった。
でも、のどかな田舎の村などなら分かるが、東京に無人販売所があることに、初めて見たときは思わず二度見するほどだった。
昭和50年代に入ると農家が庭先や畑の傍らに簡単な棚をつくり、自家産の野菜を売るようになった。
手作りの棚などに野菜を並べて、無人ではあるが、消費者は傍らの札に表示してある代金を決められた箱に入れ、野菜を持って帰るという方法である。
残念ながら、採算が合わないなどの理由から、販売所の数も徐々に減っていったそうだが、今もまだ、喧騒から隠れるようにひっそりと佇んでいる、野菜の無人販売所。
繋がりが希薄で、互いの信頼関係が崩れつつある今だからこそ、余計にその姿が恰好よく映った。