コロナと夏の夜の花火

本来なら東京五輪の開会式が行われていたはずの日に、全国各地で花火が打ち上がると言う。人だかりができると問題ということから、花火が打ち上がる場所は非公開となっている。

東京では、三ヶ所ほどで花火が上がるという話は聞いていたから、多摩川のどこか一ヶ所、調布や二子玉川辺りになるかな、と思いながら、夜八時前に何気なく多摩川沿いに向かって散歩がてら歩き出した。和泉多摩川駅を越え、多摩川に向かっていくと、鉄橋下から土手沿いに人々が集まっているのが見えた。普段の花火大会と比べると、だいぶ少なく、数十人ほどだった。その様子に、もしかして狛江で上がるのかな、と期待していたら、誰かがカウントダウンを始め、まもなく綺麗な花火が目の前の河川敷から夜空に向かって打ち上がった。

どれくらいだっただろう、本当にあっという間だった。たぶん数分もなかったと思う。

最後の花火が打ち上がると、集まっていた人たちが拍手をした。鬱屈した感情もあったのか、明るい拍手だった。それから皆、それぞれの家に帰っていった。これくらいの規模で、開催場所も知られず、さっと打ち上がってさっと終わる花火というのもいいなと思う。心が少し元気になった。

多摩川の白と黄色の花

多摩川を散歩していると出会う花で、土手に咲いている白と黄色の花がある。名前は分からない。季節はだいたい夏頃、五月から八月くらいまで咲く白と黄色の花。調べると、ヒメジョオンという名前のキク科の花で、川沿いだけでなく道端などでも見かける野草の一種だと言う。

ヒメジョオン

ヒメジョオン

ヒメジョオン、多摩川

ヒメジョオン、多摩川

ヒメジョオン

多摩川の土手で撮ったヒメジョオン。

ヒメジョオンは、種子の寿命が三十年以上と長く、繁殖力が強いという特徴もあり、また、花弁の白い部分が紫がかっていることもある。北アメリカが産地で、一八六五年頃に観葉植物として日本に入り、明治時代には野草として定着する。在来種の生育を脅かす可能性がある外来種として指定され、国立公園などで問題になっている。

漢字で書くと「姫女苑」という表記になる。「姫」は「小さい」ことを意味し、「女苑」は中国産の野草を指す。

白と黄色の色味で言えば、カモミールの花とも似ている。カモミールとヒメジョオンの違いとしては、ヒメジョオンのほうが「花弁が細い」という特徴が挙げられる。カモミールの花の画像を見ると、花弁の一枚一枚が、ハルジョオンより太いように思う。

もう一つ、ヒメジョオンとよく似ている花にハルジオンという花もある。

ヒメジョオンとハルジオンの違いは細かく、まず花が咲く季節が、ヒメジョオンは五月〜八月、ハルジオンは(漢字で春紫苑と書くように)春頃で、四月から六月辺りになる。花の形としては、花びらの部分が、ハルジオンのほうが細く、数も多い一方で、ヒメジョオンのほうが若干太くて少ない。また、花弁が下向きのほうがハルジオンで、やや上向きな花がヒメジョオンといった違いもある。

要は、白と黄色の花で、より花弁が細くて下向きになっているほうが、ハルジオン、ということになる。また、葉の根本と茎のつなぎ目の辺りでも見分けることができ、葉が茎を抱くようについている場合はハルジオン、まっすぐついている場合はヒメジョオンとなる。

ちなみに、ハルジオンもヒメジョオンも食べることができるようだ。ハルジオンは、てっぺんの柔らかいつぼみや花が美味しく、味は春菊に似ていて、ヒメジョオンも、春菊の感じだという。

上空で響いた火球の音

昨日の深夜、ちょっとだけ作業を進め、それから洗い物を終えた辺りで、突然、誰かテレビでも落としたのかと思うような激しい衝撃音が聴こえた。音は、「ドン」と「バン」の中間辺り、何かが破裂した爆発音とも、何かがぶつかった衝撃音とも取れるようなものだった。キッチンの小窓の外から聴こえたので、なんの心当たりもなく、原因不明の音だった。

不思議なもので、こういう謎の音が聴こえた場合でも、眠かったせいもあってか、脳は、なんだろう、と疑問に思うこともなく、上の階の人か隣の家の人が「何かした」のだろう、何をしたか全く想像もつかないが、この世界には、そういうこともあるものだ、と妙に納得して眠りについた。

今朝、ネットを見ると、どうやら東京や神奈川などで、多くの人がこの爆発音を聴いたらしく、原因は「火球」ではないか、と言われている。ニュースで流れていた映像を見ると、午前二時半頃、確かに上空をまばゆい光の火の玉が降り落ちてくる様子が映っていた。

火球とは、明るい流星のことで、大気中で蒸発してしまう場合もあれば、隕石として地表に落下する場合もあり、昨夜の火球も、その明るさから隕石になった可能性があるようだ。火球の音が聴こえるというのは、とても珍しいということなので、貴重な体験ができたな、と思う。そして、被害がなかったのは、なによりだ。

もし生で火球が落ちてくる様子を目の当たりにし、爆発音が響いてきたら、「あ、世界の終わりだ」という感覚が即座によぎっただろうなと思う。ひとまず、火球が世界を滅亡させることはなく、本日も快晴の空が広がっている。