コロナと夏の夜の花火

本来なら東京五輪の開会式が行われていたはずの日に、全国各地で花火が打ち上がると言う。人だかりができると問題ということから、花火が打ち上がる場所は非公開となっている。

東京では、三ヶ所ほどで花火が上がるという話は聞いていたから、多摩川のどこか一ヶ所、調布や二子玉川辺りになるかな、と思いながら、夜八時前に何気なく多摩川沿いに向かって散歩がてら歩き出した。和泉多摩川駅を越え、多摩川に向かっていくと、鉄橋下から土手沿いに人々が集まっているのが見えた。普段の花火大会と比べると、だいぶ少なく、数十人ほどだった。その様子に、もしかして狛江で上がるのかな、と期待していたら、誰かがカウントダウンを始め、まもなく綺麗な花火が目の前の河川敷から夜空に向かって打ち上がった。

どれくらいだっただろう、本当にあっという間だった。たぶん数分もなかったと思う。

最後の花火が打ち上がると、集まっていた人たちが拍手をした。鬱屈した感情もあったのか、明るい拍手だった。それから皆、それぞれの家に帰っていった。これくらいの規模で、開催場所も知られず、さっと打ち上がってさっと終わる花火というのもいいなと思う。心が少し元気になった。