蝉が鳴かない夏

ちょっと前に、SNSなどで蝉がなかなか鳴かないという話が出ていたが、噂によると今は各地で蝉の大合唱みたいだ。でも、東京の僕の生活圏では未だに蝉がほとんど鳴かない。大きな木々のある近くの公園でも、かすかには鳴いているものの、数年前と比較して考えても、朝昼ともその声はか細く弱々しい。

こうして書いている今も、すっかり夏なのに、耳を澄ますと鳴いている声が聴こえてくるくらいだ。なんなら夜のほうが鳴いているかもしれない。

なぜ蝉がこんなに鳴いていないのか、理由は不明だ。暑すぎるからじゃないかという声もあるけれど、別に例年と比較して異常な暑さということもないと思う。33〜35度くらいだし、他の地域も同じくらい暑いものの、そちらでは鳴いている。

中国人が蝉の幼虫を取って食べているみたいな記事も出ていたが、たとえそういう人たちがいるにしても、そんなに広い範囲で蝉がいなくなるほど食べるなんてありえないと思うし、近所の公園でも、そんな張り紙もなければ、そんな人を見たこともない。そもそも中国では「夕方に蝉の幼虫を取るのが夏の風物詩になっている」みたいな専門家の声があり、風物詩になるほど大勢で取っているなら、中国でも蝉がいなくなっていないとおかしいと思う。

個人的には、都市部のヒートアイランドによる熱帯夜も関連しているんじゃないかなと思っている。東京では、熱帯夜の影響も考えられるものとして夜にまで蝉が鳴く現象が目立つようになって10年以上は経っているので、結果として生態系に変化が生じているのではないか、と思ったりする。

蝉が鳴くのは求愛の意味があり、7、8年くらい前だったか、ひどいときは夜通しうるさいほどに鳴いていたことがあった。体内時計が狂ってしまっている。ただでさえ短い寿命の蝉にとって、たとえ外からは目に見えづらくても色々と影響があるのではないか、と思った。

大阪や神戸、名古屋、静岡、千葉など、SNSで調べると、あちこちで蝉が普通に鳴き、東京や神奈川などで、相変わらず、蝉が鳴かない、あるいは少ない、といった声が見られる。決して都心部ではないものの、我が家の辺りも、明らかに弱々しい。

少し鳴いたら、もう疲れたと言わんばかりにすぐに鳴き止むということも続く。この数年、蝉がちょっとずつ減少しているのではないか、と感覚的にも思っていたが、この夏は特に少ないと思う。

ただ、蝉が全くいない、というわけでもなく、蝉の飛んでいる姿自体はときおり見かけたり、さっきも道端に蝉の死骸があった。例年より弱々しいものの、鳴き声もする。だから、少ないか、いつも通りいるものの、鳴く元気がない、ということなのかもしれない。

※このあと、シーズンが本格化したのかある程度は鳴くようになったものの、それでもやっぱりちょっと元気はなかった。