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頭に白い“飾り羽”のある鳥

そろそろ桜の時期も終わり、葉桜も増えてきた、四月中旬のこと。桜の花びらが風に吹かれて道を転がり、菜の花が川辺に咲き誇る喜多見の野川沿いを散歩していると、一羽の白い鳥が、川のなかをひょこひょこと歩いていた。

よく見ると、その白い鳥は、なにやら頭の上に、二本の白い羽根の髪飾りのようなものがついていて、餌となる小魚を探しているようだった。


人間でも、こういう髪型の人いるな、と思う。おしゃれでもあり、不思議でもある、髪飾りのついた白い鳥。初めて見る。調べてみると、この鳥は「コサギ」という鳥で、シラサギの一種のようだ。コサギは首が長く、脚やくちばしも長いサギの仲間で、主に水辺に生息している。

頭に生えた二本の白い飾りのような羽根は、繁殖期に入ると現れる“飾り羽”で、サギ類はオスとメスの両方に生えるようだ。

主としてディスプレーに適応した鳥類の羽毛の総称。頭上や後頭の冠羽、長いひげ状の羽毛やよく伸びた眉毛びもう、背・胸・わきなどの長い特殊な羽毛、上尾筒や尾の変形物などを含む。飾り羽は、三次性徴として雄で発達しているのが普通であるが、ディスプレーその他の性行動における雌の役割に従って、雌で発達していることもある。(飾り羽|コトバンク」

ディスプレーとは、鳥類の専門用語で、求愛や威嚇などの際に、音や動作・姿勢などによって誇示する行為を意味すると言う。あの飾り羽で、雄らしさをアピールしているのだろうか。そういったものがあるんだと初めて知った。ちなみに、コサギの繁殖期は、四月から八月頃。年に一回の繁殖で、餌は、川の魚や蛙、ザリガニなどを捕食する。

このときも、コサギは熱心に水中を眺めながら歩き、岩陰に何か餌になりそうな生き物でも見つけたのか、くちばしを伸ばすように一生懸命ついばんでいた。

成城学園前の桜並木

この春は、なるべく桜を写真に収めておきたいという想いから、小田急線で狛江から二駅、成城学園前駅の桜を撮ってきた。成城学園前付近で、のんびりと座ってお花見をするなら、きぬた公園が名所として知られている。ただ、距離的なことや、人が多い場所が苦手ということもあり、僕は、駅近くの住宅街の桜並木と、東宝スタジオ近くの仙川沿いを歩いてきた。

成城と言うと、世田谷区の端に位置し、世間一般的には、「お金持ち」のイメージが強い町でもある。僕自身、子供の頃に母親と一緒に成城を歩いたときに、ここはお金持ちの人がたくさん住んでいるんだよ、と教えられて以来、その記憶とともに成城=豪邸という印象がとても深く残っている。事実、そういったランキングでも世田谷区成城は上位に入ってくるし、実際に歩いてみても、一体どんな人が住んでいるんだろう、というような大豪邸が並んでいる。

同時に、成城学園前は、駅名の通り、学生街でもある。成城大学があり、附属中学や高校などもあるため、駅付近で学生もよく見かける。小田急線では急行が止まり、駅隣接の成城コルティには、本屋からアパレルショップ、食材、雑貨まで、買い物する場所も充実し、日頃から多くの人で賑わっている。

その成城で散歩しながらの花見にぴったりだと思う桜並木が、駅から数分歩いた住宅街にある。成城学園前駅の中央改札口を出たあとすぐを左に進み、成城通りを前進すると、まもなく桜の木々が見えてくる。立派な家々の並ぶ閑静な通りに、どこまでも伸びていくような桜並木が続く。


静かな住宅地に、光と桜が自然に溶け込んでいる。後から知ったのだが、この成城学園前の桜並木は、成城学園出身の森山直太朗さんの『さくら』のモデルになっているそうだ。

途中、こんな注意書きがあった。やみくもに怖がらせるのではなく、ミツバチは攻撃性が高くないし、受粉を助ける貴重ないきものだから、そっと見守りましょう、という文言がなんだか優しいなと思った。

成城学園前の桜の名所として、もう一ヶ所、仙川沿いの桜並木が挙げられる。仙川自体は駅のすぐ近く、成城大学の横を流れているものの、桜並木が綺麗な場所は、少し遠く、徒歩だと十五分くらいはかかると思う。バスで行く場合は、成城学園前駅南口から数分の東京都市大付属小学校前で降り、それから歩いて一分ほどで到着する。

バス停の近くにコジマ×ビックカメラや東宝スタジオがあり、その横を左に(スタジオ敷地内に)入っていくと仙川が流れている。東宝スタジオは、「ゴジラ」シリーズも撮影された東宝の撮影所で、国内の撮影スタジオとしては最大規模だと言う。東宝スタジオの建物内は基本見学はできないようだが、外に出ているゴジラ像や壁画は見学、記念撮影などができる。


はらはらと桜吹雪を浴びているゴジラ像を撮りたくて、しばらく待っていたものの、結局タイミングが合わなかった。このスタジオの先に、仙川が流れている。ゆったりとした仙川の流れと、風に揺れて散っていく桜の花が幻想的だった。

僕が行ったときは、それほど人が多い印象もなく、割とのんびり散歩できた。水辺と桜の組み合わせが、本当に美しかった。仙川沿いは、途中、ベンチのような椅子もぽつんぽつんと用意されているので、疲れたときなどは座って一息つくこともできる。

ちなみに、「仙川」の名前の由来は、もともと水源だった勝淵神社前の丸池に、釜の形の湧き出し口がたくさんあり、それが「千釜」と呼ばれ、なまって「仙川」になった、と言われている。また、この周辺に仙人が住んでいたことから「仙川」と呼ぶようになったというユニークな説もあるそうだ。

水辺と花、二ヶ領用水の桜

登戸駅の近くにある桜の名所として、宿河原しゅくがわらの二ヶ領用水がある。個人的にも好きな場所で、桜の時期はぷらっと散歩がてらお花見に行く。小学校の修学旅行で行ったきりだからおぼろげながら、京都にある哲学の道にも雰囲気が似ているかもしれない。

二ヶ領用水の歴史は古く、江戸時代初期の徳川の命によって作られた用水路で、多摩川から繋がっている。二ヶ領用水という名前は、江戸時代の川崎領と稲毛領にまたがって流れていたことに由来する。

小田急線及び南武線の登戸駅から歩いて十分ほどで着く。ただ、最寄駅は、厳密には登戸ではなく、南武線の宿河原駅になり、駅から徒歩すぐの場所を流れている。二ヶ領用水では、小川沿いの約二キロという距離をたくさんの桜が並び、鳥たちのさえずりや水辺のせせらぎ、小川を泳ぐ鯉など、のどかな自然の世界に囲まれている。夜桜では、提灯が灯り、うっすらと桜がライトアップされる。

川崎市屈指の桜の名所でありながら、意外と穴場でもあり、休日は多少混雑するものの、都心ほど人混みでいっぱいといった印象はなく、ゆったりと桜並木の散歩を堪能できると思う。

この春も、二ヶ領用水に桜の写真を撮りに行ってきた。僕の場合は、今自分が住んでいる狛江から、多摩水道橋を渡って登戸側の多摩川沿いを下流に向かって歩く。登戸駅から向かう場合も、いったん多摩川沿いに出ると道順が分かりやすいかもしれない。南武線の宿河原駅からであれば、すぐに着く。

左手に多摩川を望みながら、土手を歩いていく。登戸の多摩川沿いも、歩いていると、ちらほらと桜の木々が土手を彩っている。


途中、夜には河童でも泳いでそうな不思議な池がある。この小さな池ではよく釣り人が天然の釣堀のようにのんびり釣りをしている。


多摩川から、二ヶ領用水の入り口に向かっていくポイント。向こう側に見える対岸が狛江になっている。


この辺りでもお花見をしている人がいる。この道を越えると、二ヶ領用水の桜並木に到着する。手前には、多摩川の資料館でもある二ヶ領せせらぎ館があり、スマホで予約するレンタル自転車のサービスもすぐ近くに用意されている。

道路を越え、二ヶ領用水に入っていく。よく晴れた快晴の一日で、桜もほとんど満開だった。おそらく今週末辺りはまさにピークになると思う。平日だった影響もあり、人は少ないものの、子供たちが遊んでいたり、老夫婦が眺めていたりと、水辺には優しい時間が流れていた。