星の見える東京

種田と芽衣子〜『ソラニン』の名言・名台詞〜

目次

漫画『ソラニン』の名言・名台詞

映画『ソラニン』 予告編

浅野いにおさんの漫画『ソラニン』は、今からもう10年以上前の2005年、2006年に出版され、2010年には映画化もされました。

種田成男と井上芽衣子の小さな恋や人間模様を描いたストーリー漫画作品である。タイトルの「ソラニン」は、作者が当時交際していた彼女が「アジカンの新しいアルバム、ソラニンって言うんだって」という一言がきっかけ。

出典 :『ソラニン(概要)』

音楽の道を目指しながら、現実とのはざまで葛藤する種田と、OA危機メーカーで働くOL2年目の芽衣子。そして種田の死。

最近、また久しぶりに『ソラニン』を読んでいるのですが、この作品には、数多くの名言・名台詞が登場します。

ここでは、種田や芽衣子の言葉を中心に、僕が個人的に好きな言葉や台詞などを選んでまとめました。

東京には魔物が潜んでおります。(芽衣子)

冒頭の芽衣子の心の声。「あたしは東京のどこにでもいるようなOLで、でもまだ若いから社会とか大人とかいろいろ不平不満が全然あって。どうしていいかわからなくて体に毒がたまってく。東京には魔物が潜んでおります。」

東京にある、どこからともなく訪れ、内側に巣食って膨れ上がる“魔物”を表現した言葉。

自分のなかで浄化できないままたまっていく毒が、はけ口のないまま心を蝕んでいきます。

辞めちゃいなよ、本当に芽衣子がそうしたいなら。…きっとどーにかなるさ。(種田)

芽衣子が仕事を辞めるかどうか悩んでいるときの種田の台詞。

ちょっと無責任に思えるかもしれませんが、でも、無責任な優しさがときどきふっと心を軽くし、背中を後押ししてくれるかもしれません。

自分はそんな風に言えないことも多いので、種田のその勢いが少し羨ましくもあります。

…でも、俺、ちょっと寂しかったかも。(種田)

突然芽衣子の家を訪れることになった芽衣子のお母さんに、種田と同棲していることを言えず、種田は約束していた動物園に加藤と一緒に行くことに。

帰ってきたあと、芽衣子を抱きしめながら言う種田の本音。

その時、どうしてくれるの? 一緒に死んでくれるの?(種田)

芽衣子が種田に音楽の道に挑戦するべきだと勧めるシーン。「種田は誰かに批判されるのが怖いんだ!! 大好きな大好きな音楽でさ!!」「でも、褒められても、けなされても、評価されてはじめて価値が出るんじゃん!?」「…それで、ホントだめだと思ったら…その時はその時だけど……」と芽衣子。

もしそれが自分を保つたった一つだけのお守りで、それが否定され、「夢」が「叶わなかった夢」という「現実」になってしまったら、そのときは「死」なんだという種田のひっ迫した想いが伝わってきます。

わかってるさ、正しい答えなんて無いことは。ただ確実なのは川のように着々と時間は流れて、どのみち行きつく先は海だけれど。…逆らってみるかぁ。流れに。(種田)

悩んで、悩んで、ひとり土手に立って川の流れを眺めながら、音楽の道に進んでみよう、と決意する瞬間の種田の言葉。

人生にかぎらず、あらゆる場面で、流れに逆らうのはとても難しいこと。決意や勇気のいること。そうして思いきってジャンプしてみることで、新しい流れができることもあるかもしれません。

俺は、幸せだ。 ホントに? 本当さ。 ホントに?(種田)

種田が死亡事故に遭う直前、バイクに乗りながら繰り返し自問自答するシーン。音楽で世界を変えたいのではなく、バンドがあって、みんながいて、芽衣子がいて、それだけでじゅうぶんに幸せだ、と一度自分に言い聞かせながら、本当にそうなのかな、とよぎった疑問符。

そして種田は泣き叫びながら赤信号に突っ込んでいきます。

たとえそれが険しい道で、世界の果ての果てまで続いていても…僕は僕の道をゆくんだ。(種田)

種田の回想シーン。学生最後のライブで、曲の途中に歌詞が飛んだ種田が、自分の想いを吐き出すように拳を突き上げて言った言葉。不安を打ち消すように放った“強がり”を、ステージの真ん中で叫ぶ種田。

いろいろあったような。なかったような。そんなもんか、人生なんて。(種田)

死の直前、走馬灯のようによぎった回想のあとの事故現場。

最後のライブ後に、河川敷で種田と芽衣子が一緒に話し、将来への不安がふっとゆるんだような芽衣子の暖かさに触れて、ラブソングでもつくろう、と思った種田。その日つくったラブソングは結局恥ずかしくて聴かせることはできなかった。でも、帰ったら聴かせてみよう。「帰ろう。早く、家に帰ろう。」空を見ながら思う、種田の最期の言葉。

あたし 落ちついているなんて初めて言われたよ。(芽衣子)

種田が亡くなり、商店街の花屋でアルバイトを始めた芽衣子が、先に入っていた大学生の大橋くんに、「落ちついていて大人な感じ」と言われた際に驚いて大橋くんに言った台詞。

自分ではまだ子供っぽいと思っていたり、ただ寂しくてぼうっとしているだけなのに、年下の子にはそれが「大人っぽく」見えるとき、嬉しいような、ちょっぴり悲しいような、ふしぎな気持ちになります。

芽衣子もそんな気分だったのかもしれません。

曲が……終わった。(芽衣子)

種田のあとを継いでライブを行い、種田のつくった『ソラニン』を歌い切る芽衣子。歌っているときだけが夢で、この曲が終わったら、「またいつもの生活が、はじまるんだ」。

夢のような一瞬が曲とともに終わり、種田と過ごした思い出の詰まった部屋を引っ越し、また、芽衣子の新しい生活が始まります。

今日もどこかで戦争をしてるとか、たくさんの人が死んでるとか、そんなの信じられないくらいそれは平和な景色で、この景色がいつまでも続けばいいのにな。なんて考えてしまった。(芽衣子)

そして、『ソラニン』のエンディング。よく種田と話した河川敷をみんなで歩きながら、きょうの東京はよい天気で、いつものように小田急線が走り、多摩川では恋人たちがボートをこいでいる。

こんな景色が、いつまでも続けばいいのにな、と芽衣子は心のなかでつぶやきます。

ここは、ほんとうに平和な景色が広がっています。

私は言葉でしか伝えられないから、ときどきおかしな嘘をつく。こんな時にもし楽器が弾けたなら。(本田繁子)

番外編『はるよこい』で、芽衣子が種田と暮らしていたアパートの一室に引っ越してくる若い女性の言葉。

言葉でうまく伝えられなくて、それでも何か言わなくてはいけなくて、おかしな嘘を、自分にも、だれかにも、大切なひとにもついてしまうとき、「もし楽器が弾けたなら」なんて思うこともあります。

心は揺れやすく、壊れやすく、言葉は分かり合うにはいつも足りないもの。

今でも時折、あのメロディーが蘇ってくる事がある。(芽衣子)

『ソラニン』のその後が描かれた新装版で、結婚し、妊娠した芽衣子。種田の死から10年のときを経て、芽衣子には変化が。

「“東京には魔物が潜んでおります。”…10年前の私は、そんな風に思っていた。なんの武器も持っていないのに、私たちはただ闇雲に見えない魔物と戦おうとしていた。…あの頃の私たちは、一体何と戦っていたんだろう。そしてやっぱり、私たちは負けてしまったんだろうか。でも今、私には守るものができた。」

そして、夢のなかのような日々の遠くから、ふいに聴こえてくる「あのメロディー」。

以上、『ソラニン』から最近読んで選んだ名言、名台詞でした。結構今の心情も色濃く反映されているかもしれません。

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