多摩川とギターの音色

多摩川ではギターの練習をしているひとを見かけることがある。
河川敷に座って、ギターの練習をし、ときおり歌も織り交ぜて弾き語りをしている。狛江駅前で路上ライブをしているミュージシャンもいるが、彼らよりもっと若いことが多いかなと思う。
あるとき、下北風の古着ファッションでギターケースを抱えて訪れ、缶ビールを横に置いて弾き語りする若者カップルがいた。
それほど声は張らず、隣に座っている彼女に届かせるような優しい声で歌っていた。
その空間だけ、物語の世界みたいだった。
映画のロケ地になり、実際に物語の世界として使われているが、現実のほうが物語のように映る瞬間もある。
漫画『ソラニン』は、バンドマンの物語で、舞台がこの街なので多摩川もよく登場する。
ソラニンの影響から多摩川でギターの練習をする若者が増えたのか、それとも、もともと多摩川で練習するひとが多いことから、その光景に作者の浅野いにおさんがインスピレーションを得たのだろうか。
もしかしたら、浅野いにおさん自身が、そのひとりだったのかもしれない。