秋頃に多摩川土手に咲く赤い花
秋の始まりの頃に、多摩川の土手辺りに咲く赤い花と言えば、彼岸花がある。
これほどはっきりと彼岸花を見たのは、多摩川沿いに引っ越してきてからだと思う。もしかしたら、視界には入っていても、あまり深く意識していなかったのかもしれない。
初めて土手の彼岸花を見たときは、突然現れることと、その赤さにぎょっとした。
彼岸花は、毒性もあり、その色や見た目も含めて、不吉なイメージが昔からあったようだ。死人花や幽霊花など、怖い別名もたくさんある。
ただ、毒があると言っても、触るだけでは問題はなく、食べると危険という話で、念入りに毒を抜いて非常食として食べることもあったと言う。
時期としては、夏が終わり、秋のお彼岸頃に咲く。彼岸花というのも、お彼岸の頃に咲くことに由来する。
また、彼岸花には、土葬が主だった頃に、遺体を守る役割もあったそうだ。
かつて日本で土葬が主であったころ、遺体は葬儀のあと火葬されることなく 棺桶に入れ、そのまま土に埋葬されていた。そうなると土の中にいるモグラやネズミが、埋葬された遺体に悪さをしてしまう。
先ほど述べたようにヒガンバナには毒があり、害虫や害獣を寄せ付けない。そのため昔の人は遺体が損なわれるのを防ぐために、遺体が埋葬されているお墓の周りに ヒガンバナを植えたそうだ。
結果としてヒガンバナには死に関わる悪いイメージがついてしまったが、この毒のおかげで墓の周りにはモグラやネズミは寄り付かなくなったそうだ。不吉だからと嫌われているヒガンバナは、大切な遺体を守る役割を果たしていたのである。
埋葬された遺体に、モグラやネズミが近づかないように、お墓の周りに彼岸花を植える。
死と結びつきながら守ってくれる赤く美しい花、という風に考えると、いっそう奥深い雰囲気を帯びてくる。
先週くらいに、多摩川の土手を歩いていたら、草陰にひっそりと彼岸花が咲いているのを見つけた。
それから一週間ほどで、あっという間にたくさんの花が姿を現した。
とは言え、これは狛江の多摩川沿いに限ったことかもしれないが、「名所」と呼べるほど大量に咲き誇っているわけではなく、ほどほどに咲いている、という印象が近いと思う。
赤い色が印象的な彼岸花
雨が降ったあとに一気に咲くことから、雨後の彼岸花という言い方もされる。
彼岸花は、ぽつんと一輪だけ咲いている場合もあれば、集団で寄り添うように群生している場所もある。
白い彼岸花
また、赤い彼岸花だけでなく、白い彼岸花も咲く。
白い彼岸花は、赤い彼岸花と黄色い彼岸花の交配種で、繁殖力が弱く、あまり目にする機会もないようだ。
エネルギーに満ちている赤い彼岸花と比べると、どこか弱々しく見える。白い彼岸花は珍しいそうだが、多摩川には、まれに白い彼岸花も咲いている。