赤い星
東京の南の空に、赤い星が見えた。きっとあれが火星なんだろうなと思う。マンションのベランダで望遠鏡らしきものを使って眺めている人もいた。
星に近づこうと少しだけ歩いたが、一向に辿り着けそうな気配がしなかったので、しばらくその場でぼんやりと、遠くに瞬く赤い星を眺めた。
眺めながら、ふと、いつか火星に人類が移住することもあるのだろうか、と考えた。
そして、すでに多くの人類が移住して、そこで生活を送っていることを想像しながら、その赤い星を眺めてみたら、なんだか少し悲しい気持ちになった。
夏の生暖かい夜風が、僕の隣を吹き抜けていった。