秋雨と金木犀

九月は、しばらく重苦しい雨の日が続いた。どんよりとした悲しい夢で目覚め、窓の外では寂しそうに雨が降っている、という夜も幾度もあった。

その雨も、ようやく少し落ち着いてきた。道端には、帽子をかぶったどんぐりが転がり、秋の虫たちの鳴き声が響き渡り、夜風に誘われて金木犀の香りが漂ってくるようになった。

秋が、徐々に深まってくる。秋は、「深まる」という動詞が本当にぴったりの季節だな、と思う。懐かしく、物悲しい、秋という名前の穴に、ゆっくりと「潜っていく」ような感覚になる。秋の世界に包まれる。だから、秋は涼しいのに、温もりもあるように思う。