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台風と狛江の避難所の体験談

台風と狛江の避難所の体験談

到来前から非常に大型で警戒が必要と言われた台風19号。この台風によって、多摩川の水位も上昇し、氾濫危険水位(一部では氾濫)まで達しました。

かつて「多摩川水害」として堤防が決壊し、多摩川が氾濫した歴史もある狛江。

狛江、多摩川氾濫(洪水)のハザードマップと避難所狛江市、多摩川の大洪水 東京と神奈川の県境に位置する狛江市は、過去に、堤防が決壊し、多摩川が氾濫した「多摩川水害」と呼ばれる大きな洪水...

多摩川の河川敷にはモニュメントも建立され、ハザードマップを見ても、最悪の場合は街の半分近くが被害に遭う、という想定もあり、日頃から多摩川の氾濫に対する意識も高かったのではないかと思います。

今回、僕も人生で初めて避難所に行ったので、そのときの体験談から学んだこと感じたことを忘れないうちに日記やメモも含め記録(一部住民の方のツイートを引用)しておこうと思います。

年齢や性別、持病の有無、ペットの存在や災害の種類、規模などによっても不安や対応は違いますし、そもそも避難所よりも自宅に待機していたほうがいい場合もあるでしょうから、あくまで個人の感想として、今後の参考にしていただければと思います。

中央公民館

この台風19号の豪雨で僕が行った避難所は、中央公民館(狛江市役所)でした。

台風が近づき、本格化する前に自主避難所として開設していたので、なるべく早めに行ったほうがよかったのでしょうが、もともと人がたくさんいる空間が苦手だったことや体調面での不安もあり、正直しばらくのあいだ躊躇していました。

一応、前日の夜から、持っていくものは整理してあり、財布、スマホ、充電器、ラジオ、飲み物、軽い食べ物、着替え、ビニール袋、その他大事なものをバッグに詰め、パソコンなど持っていけない大切なものは高い位置に置き、ブレーカーを落としたりガスの元栓を閉めるなど家を出る準備もし、ようやく避難しようとバッグを手に家を出る頃には、だいぶ風雨も激しさを増していました。

避難所まで歩きで向かったので何か飛んでこないかと怖く、途中小走りで向かいました。車は降りしきる雨道をときおり走り去り、避難所に向かうらしい歩行者も二、三人見かけました。

持ち物 : 財布、スマホ(イアフォン)、充電器(停電していなかったので施設で充電は可能)、ラジオ、飲み物(水)、軽食、着替え(濡れたように替えの靴下、下着、Tシャツを適当に)、ビニール袋。この辺りはほんと人それぞれ必要最低限の大切なものは違うと思います。あと鞄は防水にしたり、濡れたら困るものはビニール袋やジップロックに入れたほうがよいでしょう。

このとき狛江市が開設していた避難所は、中央公民館、狛江第一中学校、狛江第四中学校。ちなみに、今回の避難所はあくまで「自主避難所」なので、食事などの提供はなく、必要なものは各自で持参する、ということでした。

最新の情報については、狛江市の公式ツイッターおよび、ツイッターのつぶやき検索で入手しました。

記憶が曖昧なのですが、ツイッターの検索で、「狛江 避難所」と検索した際、どちらかの中学がすでに満杯だということを知り、「避難所が満杯になる」ということがあるのだと(当然と言えば当然なのですが)思い至ったことも避難しようと思った理由の一つでした。

情報は主にツイッター、避難所は満員になることがあるので、不安なひとは早めに行くこと。場所も、休める空間が確保しやすくなります。

市役所に着き、図書館のある公民館に入ると、すでに一杯だと市役所の職員さんに言われ、隣接された狛江市議会の議場がある建物を案内されました。

この建物は奥まった場所から入っていくので分かりづらいですが、建物内に入ると思った以上に数多くの部屋があり、廊下も含めれば結構なスペースがありました。

受付で、名前と住所、ペットの有無などを書く紙に記入し、部屋を案内されました。ただ、最初に部屋に案内されたあとも、別に移動は自由で、途中で帰る際も特に「チェックアウト」的なものは必要ありません。

避難勧告が本格化してからは、さらに避難者は増加し、公民館も、まもなく満員になったようでした。

避難所は、高齢者の方々や子連れの家族が多く、幼い子供たちは歩き回ったり泣き声をあげることもあるので、その声や音が気に障る、といったこともあるかもしれません。

別の地域で避難したひとの話でも、子供の声や他人の喋り声が辛く、耳栓やイアフォンを持っていったほうがいい、という話を聞きました。

慣れない環境なども考えれば、子供が泣いてしまうのは仕方がありませんし、大人でも、不安なときは、閉じこもって一人になりたいひともいる一方で逆に少しでも声を出して誰かとお喋りをすることで不安を紛らわせたいというひともいます。

僕も、正直心細く、脳裏にハザードマップの赤く染まった狛江の街と水没する光景がよぎっては不安になり、誰かと声に出して話したい、「怖いですね」「心配ですね」と共有したい、という思いもありましたが、人見知りなこともあり、結局はLINEやTwitterを眺めて過ごしました(入ってくる情報や溢れそうな多摩川の映像、頻繁にいっせいに鳴り響くスマホの警報音などで余計にナーバスになっていきました)。

その他、友人同士で避難している若者や、僕と同じように一人暮らしで避難しているひともちらほらといたように思います。

ちなみに、子連れの家族の場合、子供の年齢は幅広かったですが、僕の見るかぎりでは赤ん坊はいませんでした。授乳やおむつなどの問題もあるので別の部屋が用意されているのか、あるいは、色々な点を総合的に考慮し、知り合いの家や自宅のほうが安心だと考えるひとも多かったのかもしれません。

この避難すべきか、家に止まるべきか、という判断がもっとも難しい点の一つだと思います。安心と安全、家の場所や状況などを鑑みながら、総合的に決断する以外にありません。

過去の避難所では性被害や盗難の話も聞きますし、ラジオでも、「避難すべきと言われたから、すなわち避難所に行く、と必ずしも思わなくてもよく、なるべく安全な場所にいる、ということが避難」という風に語られていました。

お年寄りや女性、赤ん坊とシングルマザーの母親、病気を抱えたひとなど、この辺りはほんとうに難しい判断が求められます(できれば知人の家などにあらかじめ避難できるようならそれが最適だと思います)。

他にも、たとえば精神的な問題として、大勢のひとといることでパニックになってしまうかもしれない、といった不安から避難所に行けないひともいるかもしれません。

参考になるかは分かりませんが、僕が行った中央公民館の避難所では、眠るときは多少息苦しさはあるかもしれないものの、それ以外は自由に動き回れますし、廊下など、なるべく人の少ない場所で休んでいるひともいました。

トイレも、この台風に限っては幸いなことに断水や停電もなかった(和泉多摩川など一部地域では停電があったようです)ため、綺麗なトイレが各階ごとや各建物ごとに数も多く、全く並ぶことなく使用でき、また避難もその夜だけで済んだこともあり、館内にそれほどぎすぎすした空気はありませんでした。

ただ、基本的にはブルーシートに横になり、他の人たちも隣にいるような状態なので、プライバシーはありません。この辺りは今後避難が長期化した際の課題だと思います。

持ち物として持ってくればよかったなと思ったのは、「スリッパ(替えの靴)」と「上着」です。

靴がびしょ濡れなので、せっかく靴下を履き替えてもまた湿ってしまうことから、スリッパやサンダルを持ってくればよかったということと、雨で濡れたせいもあり、まだ10月ですが、夜になってから思った以上に冷えました。

季節にもよりますが、なるべく暖かい服装にしたりホッカイロなどを持ってきたほうがいいと思います。

ただし、これはどの避難所でもそうなのかはわかりませんが、夜に役所のほうで一人一枚(一グループで一枚)毛布の貸し出しがあり、とても助かりました。硬い床で寝るひとには空気を入れて敷く簡易性のエアマットも提供されました。

避難所で貸し出しがあったもの。

毛布、空気で膨らませる敷き布団、スマホの充電(一人一時間、先着順)、スマホの充電は、別の地域の避難所の話では、誰かが管理するわけではなく独占しているひともいたようで、時間を区切っての貸し出しは余計な不安やフラストレーションがたまらずによかったです。

エアマットの寝心地も、決して悪くはありませんでした。毛布も、一通り配ってからまだ余っていたのか、もう一枚必要なひとには貸し出していました。

狛江の避難所は、最終的に以下の施設がなっていたようです。

  1. 狛江市中央公民館(市役所) ペット可
  2. 狛江第一中学校
  3. 狛江第二中学校 ペット可
  4. 狛江第三中学校
  5. 狛江第四中学校
  6. 狛江第三小学校 ペット可
  7. 狛江第六小学校
  8. 緑野小学校
  9. 上和泉地域センター
  10. エコルマホール

この台風による避難で問題となったことの一つがペットの避難でしたが、狛江はゲージがあれば一部受け入れ可能でした。


ただ、自治体ごとでペットの避難所入りが禁止の地域もあれば、大丈夫な地域もあり、この辺りはもう少し統一したルールや避難場所をあらかじめ決めたほうがよいと思いました。

ペットを置いて避難し、万一のことがあれば一生後悔が残るでしょうし、置いていくという選択肢は最初からないというひとも多いでしょう。一方で、猫アレルギーや鳴き声の問題などで避難住民の苦情や被害も想定され、スペースがなければこの辺りは非常に難しい問題となるでしょう。

また「ペット」と一口に言っても、犬猫だけでなく、大型犬と小動物と爬虫類と鳥類と、色々な動物がいることが想定されます。

動物の避難スペースの状態がどうだったか、また、今後もこの避難所がペット可能な施設として活用されるのか、といったことも(そのときの被害状況によって変わりますが)予め公開してくれると安心できるように思います。

加えて、順次避難所が開設されるというのも、パニックの要因の一つにはなっていたと思います。

僕は市役所の公式ツイッターで随時情報がチェックできましたが、慣れていないひともいるでしょうから、大型台風などあらかじめ想定できる場合は特に、もう少しいっぺんに避難所を開設し、(ペットがどこが可能かも含め)情報発信したほうが余計な混乱に繋がらないような気がします。

ツイッターを見ていると、エコルマホールや総合体育館の避難所開設を求める声もありました(エコルマホールはのちに避難所に)。確かにエコルマホールは駅前で分かりやすいですし、土地勘のない一人暮らしの学生さんでも行きやすくなるのではないでしょうか。

避難所が少ない(想定以上に避難者が多かった)という声もあり、民間の施設の活用など場所の提供だけでもしてもらえるとより多くのひとが安心できたり避難者のストレスも軽減されるのかなと思います。

写真についてはプライバシーの兼ね合いなどから撮ることが難しいですが、確かに「避難所」の空気感を伝えるのに、各避難所が写真を載せることができれば安心して行けるひとも出てくるかもしれません。

最後に、中央公民館に関する話に戻りますが、この場所は市役所でもあるので、数多くの職員さんが災害や情報収拾、避難者の対応に当たっていて、自分たちも不安だろうに、ほんとうに凄いな、と思いました。

情報発信も狛江市の市役所のツイッターと市民のつぶやきが非常に参考になりましたし、職員さんたちも頼もしく、優しく接してくれる職員さんもいてとても助かりました。

夜、日付の変わる前くらいに東京では台風のピークが過ぎ、もうほとんど大丈夫ですよ、という声が聴こえてきたときは、心からほっとしました。

役所の方々に感謝です。

川沿いや一部地域の方々、夜中の帰宅が不安なひとはそのまま残って一晩を過ごしましたが、半分以上の住民は雨がやんだり避難勧告が解除された段階で毛布とエアーマットを畳み、ぞろぞろと帰っていきました。

僕も、早く一人のベッドで眠りたかったので帰路に。

雨がやんだと思ったら、どこに隠れていたのか役所の敷地で秋の虫たちがりんりんと鳴き出し、雲が去って月が綺麗でした。

僕は早く帰りたくて見逃してしまったのですが、東京ではその夜、嘘のように星々も綺麗に見えたそうです。

以上、ざっくりとではありますが、避難当日の記録でした。

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