二色の桜、源平咲きの花

多摩川沿いの桜を見ていたら、普通の桜がずっと並んでいるなかに、一本だけ不思議な桜があった。淡い桃色のような白い色の桜の花に、ぽつんぽつんと赤い花が混ざっている、二色の桜だ。

こういう風に紅白に咲くことを「源平咲き」と呼ぶそうだ。源平咲きという名前は、源氏の旗が白、平氏の旗が赤であったことに由来し、基本的に桜ではなく桃や梅、椿などに見られると言う。特に、源平咲きはハナモモという桃の花で見られ、桜では、可能性として存在の否定はできない、という程度のようだ。

もしかしたら、この花も、桜ではなく、梅や桃の類なのかもしれない。源平咲きは、人為的に接木したわけでもなく、突然変異らしく、未だに仕組みは分かっていない。また、源平咲きと言うと、主に赤い花のなかに白い花が少し混じるというもので、白い花に赤い花が混じるということはないようだ。

でも、写真にもあるように、僕が見た二色の花は、白い花が主で、そのなかに赤い花が混じっていた。二色の花が咲いていたのは、登戸の多摩川沿いの土手を二ヶ領用水に向かって歩いていく途中で、この辺りは綺麗に桜が並んで咲いているから、てっきり桜だと思い込んでいたし、特徴を見ても、桜のような気がする。

ただ、源平咲きの桜は知られていない上に、「白色系統の木」に「赤い花」が咲くことはない、ということなので、一体この二色の花が、桜なのか、桃なのか、僕にはどうにも分からなかった。

狛江のたぬき

東京都内で世田谷区の隣、決して凄い田舎とも言えない狛江市内にも、どうやらたぬきが生息しているようだ。

最初に、もしかして狛江にたぬきがいるのではないかと思ったのは、自分自身の目撃体験だった。多摩川近くの小道で、誰かの用意した餌に集まっている野良猫たちを見ていたら、突然、すうっと横から混じってきた一匹の「猫ではない動物」の影があった。そのときは夜だったので、見えたのはうっすらとしたシルエットだけだったものの、たぬきのような雰囲気で、他の猫たちも、「誰だ、君は」と反応に困っているように皆でじいっと眺めていた。僕が少し近づくと、警戒心が強く、そのたぬきらしい動物はさっと走り去ってしまった。

それから何度か、その警戒心の強いたぬきらしい動物を見かけることがあった。見かけるのは決まって夜だったので、夜行性のたぬきの可能性が高いのではないか、と狛江のたぬきの目撃情報を調べると、狛江の掲示板の二十年近く前の書き込みに、いくつかの目撃談が掲載されていた。多摩川沿いの公園や、市役所前、野川などで見かけることがあるみたいだ。狛江に住んでずいぶん経つが、新たな発見だ、と言っている人もいた。その人は、「狛江に空き地や、グランドがなくなっていくのは寂しい。少子化だからなのか、昔は本当に遊ぶ所がたくさんあったのになぁ。」と昔を懐かしんでいたから、狛江で育った人なのかもしれない。

最近でも、SNSでたぬきを見たという人はときどきいるし、人懐っこい様子を映している動画もあったから、相変わらず、たぬきたちは、この街のどこかで暮らしているのかもしれない。街中で隠れるように暮らすたぬきと言うと、『平成たぬき合戦ぽんぽこ』を思い出す。

その後、僕自身も、再び、明らかにたぬきらしい動物と出会った。そのときは親子で歩いていた。ハクビシンかもしれないが、たぶん、たぬきのような気がする。狛江のたぬきは、昔からこの辺りに生息していたたぬきの繋がりなのだろうか。狛江から少し行った川崎市の生田緑地にも、まだまだ野生のたぬきが存在することを示す看板が立っている。

餌がなくなって生田緑地周辺のたぬきたちが狛江まで降りてきているのだろうか。キツネを見た、という声も一つだけあった。どうやら昭和初期の頃までは、狛江の辺りにもたくさんのキツネが暮らしていたようだ。

次大夫堀公園民家園

狛江の隣の喜多見駅から徒歩で二十分ほど、次大夫堀公園内に民家園がある。江戸時代から明治初期の農村風景を再現した空間で、古い家並みや消防小屋、また小さな水田など当時の風景を追体験できる。

古民家のなかでは、囲炉裏の火が焚かれ、民具にも触れられる。民家園は入場無料で、それほど人も多くないので、のんびりとした時間を過ごすことができる。園内は意外と広く、古民家と梅の花がほのぼのとした優しい時間にしてくれる。また、売店もあり、ラムネやおせんべい、もなかなどが販売され、お茶をすることもできる。

古民家のなかには、日用品が置いてあり、縁側から庭の様子を眺めることもでき、静かなひとときが流れている。

ぼんやりと家のなかを眺めながら歩いていたら、係の人なのか、観光客の方なのか、「こんにちは」と声をかけられた。僕も、軽く「こんにちは」と返し、特にそれ以降会話が続くわけではなく、どうやら挨拶だったようだ。

当時の消防小屋も復元され、消防服なども飾ってある。囲炉裏には火が焚かれ、誰かが暖をとっていた。

次大夫堀公園民家園では、元日やこどもの日、秋のお茶会や俳句イベントなど、様々な行事も開かれるようだ。

帰り道、普段あまり歩くことはない、多摩川の支流である野川。のどかな川の景色が見られた。