この春は、なるべく桜を写真に収めておきたいという想いから、小田急線で狛江から二駅、成城学園前駅の桜を撮ってきた。成城学園前付近で、のんびりと座ってお花見をするなら、砧公園が名所として知られている。ただ、距離的なことや、人が多い場所が苦手ということもあり、僕は、駅近くの住宅街の桜並木と、東宝スタジオ近くの仙川沿いを歩いてきた。
成城と言うと、世田谷区の端に位置し、世間一般的には、「お金持ち」のイメージが強い町でもある。僕自身、子供の頃に母親と一緒に成城を歩いたときに、ここはお金持ちの人がたくさん住んでいるんだよ、と教えられて以来、その記憶とともに成城=豪邸という印象がとても深く残っている。事実、そういったランキングでも世田谷区成城は上位に入ってくるし、実際に歩いてみても、一体どんな人が住んでいるんだろう、というような大豪邸が並んでいる。
同時に、成城学園前は、駅名の通り、学生街でもある。成城大学があり、附属中学や高校などもあるため、駅付近で学生もよく見かける。小田急線では急行が止まり、駅隣接の成城コルティには、本屋からアパレルショップ、食材、雑貨まで、買い物する場所も充実し、日頃から多くの人で賑わっている。
その成城で散歩しながらの花見にぴったりだと思う桜並木が、駅から数分歩いた住宅街にある。成城学園前駅の中央改札口を出たあとすぐを左に進み、成城通りを前進すると、まもなく桜の木々が見えてくる。立派な家々の並ぶ閑静な通りに、どこまでも伸びていくような桜並木が続く。
静かな住宅地に、光と桜が自然に溶け込んでいる。後から知ったのだが、この成城学園前の桜並木は、成城学園出身の森山直太朗さんの『さくら』のモデルになっているそうだ。
途中、こんな注意書きがあった。やみくもに怖がらせるのではなく、ミツバチは攻撃性が高くないし、受粉を助ける貴重ないきものだから、そっと見守りましょう、という文言がなんだか優しいなと思った。
成城学園前の桜の名所として、もう一ヶ所、仙川沿いの桜並木が挙げられる。仙川自体は駅のすぐ近く、成城大学の横を流れているものの、桜並木が綺麗な場所は、少し遠く、徒歩だと十五分くらいはかかると思う。バスで行く場合は、成城学園前駅南口から数分の東京都市大付属小学校前で降り、それから歩いて一分ほどで到着する。
バス停の近くにコジマ×ビックカメラや東宝スタジオがあり、その横を左に(スタジオ敷地内に)入っていくと仙川が流れている。東宝スタジオは、「ゴジラ」シリーズも撮影された東宝の撮影所で、国内の撮影スタジオとしては最大規模だと言う。東宝スタジオの建物内は基本見学はできないようだが、外に出ているゴジラ像や壁画は見学、記念撮影などができる。
はらはらと桜吹雪を浴びているゴジラ像を撮りたくて、しばらく待っていたものの、結局タイミングが合わなかった。このスタジオの先に、仙川が流れている。ゆったりとした仙川の流れと、風に揺れて散っていく桜の花が幻想的だった。
僕が行ったときは、それほど人が多い印象もなく、割とのんびり散歩できた。水辺と桜の組み合わせが、本当に美しかった。仙川沿いは、途中、ベンチのような椅子もぽつんぽつんと用意されているので、疲れたときなどは座って一息つくこともできる。
ちなみに、「仙川」の名前の由来は、もともと水源だった勝淵神社前の丸池に、釜の形の湧き出し口がたくさんあり、それが「千釜」と呼ばれ、なまって「仙川」になった、と言われている。また、この周辺に仙人が住んでいたことから「仙川」と呼ぶようになったというユニークな説もあるそうだ。